映画と呼ぶにはおこがましいレベルの悲劇の官能ドラマ。ソープ嬢は狭い家で貧乏暮らしをして、金欲しさに麻薬を売っているに違いない、という偏見のもとで作られた作品です。10点(100点満点)
どうしようもない恋の唄のあらすじ
仕事も家庭もうまくいかず、人生に絶望した矢代(カトウシンスケ)は、死に場所を求め場末の町を訪れる。彼は、死ぬ前に最後のセックスをしようとソープランドに飛び込む。そこでヒナ(藤崎里菜)というソープ嬢と出会った矢代は、彼女の肉体に溺れ、純粋無垢な明るさに触れて、生きる希望を持つようになる。
シネマトゥデイより
どうしようもない恋の唄の感想
「チェリーボーイズ」の西海謙一郎監督による、まともに演技ができる人が一人も出ていないB級恋愛ドラマ。同名官能小説の映画化です。
物語は、職も妻も失った男が死に場所を求めてふらっと立ち寄った町で、ふらっとソープランドに入り、ふらっとソープ嬢と意気投合し、ふらっと彼女の家に転がり込む、ふらっとだらけのストーリーになっています。
ヒモ男と風俗嬢の究極の愛とでもいうんでしょうか。仕事をしないことを咎めず、自分の面倒を黙って見てくれる優しい女とただ幸せに暮らしていればばいいのになぜか男は変なビジネスに手を出し、やくざに目を付けられ、やがて女までやくざの麻薬を横流ししたりして二人揃って自業自得の目に遭う話になっています。
ヒモ男が散々お世話になっている彼女に突然切れ出したり、あれだけ虚無感丸出しで死のうとしていたような男が急に嫉妬心を燃やしだしたりして意味不明でした。
風俗嬢ってわかって付き合ってるのに、「お前はいつも客とやってるんだろう?」みたいなことを言い出す思考回路が理解できません。「そうだけど、なに?」で終わっちゃうじゃん。そんなことに嫉妬を覚えるようなタイプだったらそもそも風俗嬢と付き合わないでしょ。
まず、二人の出会いのシーンからして寒いですよね。プレイの最中に男がいきなり泣き出すんですよ。風俗嬢からしたら絶対うざい客じゃん。それなのにそんな男を好きになっちゃってるからね。何から何まで全然分からないんだけど。
絶望的にリアリティーに欠けるのはいちいち安っぽいドラマチックな展開にしようとしたせいでしょうね。それに趣味レベルの演技力と演歌みたいな世界観が加わって、本当にどうしようもない恋の唄になっちゃってました。
主演二人のパフォーマンスが特にひどいですね。ぶりっ子風俗嬢を演じた藤崎里菜は素人だからまだしも、カトウシンスケの演技なんてとてもプロの演技じゃないもん。
官能小説っぽさが出たのはワンシーンだけでした。ヒモ男と風俗嬢がお隣さんのカップルとスワッピングする下りです。その流れもなんでそうなるんだよっていう無理やりな展開すぎて笑っちゃいましたね。
「お前は風俗嬢なんだから大蔵君(お隣さん)にしてやれよ。どうせいつも仕事でやってんだろ」とか彼氏に言われて、はい分かりましたってなるかよ。